10年ひと昔

10年ひと昔とは言うけど本当にあっという間だった。
こどもの頃は明日までがものすごく長く感じていた。一日がなかなか終わらなかった。一週間や1ヶ月がものすごく長く感じていた。
でも、二十代後半からだんだんと早くなってきたように思う。
でも、何ら時間の速さは実際には変わってない。
もちろん、この10年でも時間の速さは変わらない。
でも、私にとってのこの10年の間には母親との死別という悲しい出来事があった。
この10年で変わったことは母がいなくなったこと。
それ以外はただ、普通に時間が経過したように思う。
でも、親との別れは本当に大きな出来事だと思う。何年たっても親は親、こどもはこども、この位置は決して変わることがない。
そして一番近い存在。
でも、遠い存在。
そして本当に遠い存在になってしまった。
こどもの頃はよく叱られていた。 
大人になってからはそれもだんだんなくなり、孫ができるようになるといつも笑っていた。年をとり、だんだんと身体が弱ってくるといつの間にか微笑みに変わっていた。
いつも私を支えてくれて教えてくれて助けてくれた母。
どんなときにもいるだけで心強かった。
そんな母ももうどこにもいない。
お母さん、と呼んでもうんともすんとも答えてくれない。
もう一日だけでも、長生きして欲しかったなあ。
いや、ずっとずっと生きて欲しかった。
そして、もし会えるならやっぱりお母さん、と言ってお母さんを抱きしめたい。
もう一度お母さんに会いたいなあ。